Ce n'est pas aucun usage qui pleure sur lait du spilt. 後編
一樹の手が俺の胸の突起のあたりをまさぐり、そのたびに体が跳ねる。足が股の間に割り入れられて閉じられなくなる。耳を甘噛みされるとあ、と自分の声とは思えないような声が上がって、それが恥ずかしくてまた体が熱くなった。
「ふふ、可愛い…」
うるさい。無駄に良い声で囁くんじゃない。また声が出るだろうが。
そう言い返したいが声が出ず、仕方なく精一杯睨んでみるが、更に一樹は耳を撫でながら目を細めて俺の頭の下に敷いていた左手を抜き、脇腹を撫でて声を上げさせる。
「あ、あ…」
急いで毛布をかんで声を抑えても、一樹が更に左手で股のほうまでまで撫で下ろすので、ん、と声が出た。ちょっとまて、つなげると今のああん、とかならんか。洒落にならんぞおい。
そのまま一樹は俺の舌の寝間着を下着と共にずり下げる。その部分は熱いのに空気が寒い。どうやら既に俺のソレは反応していたらしい。は、と息をつくと、一樹が既に半ば、まあなんというか、アレな状態になっているそこを擦り上げる。
途端に快感が走り、もろくも俺の理性は一瞬崩壊して思わず高い声が上がる。なんだこれ、流石に俺は童貞というわけでもないが、今回は何というか…敏感すぎる。一樹が――これを認めるのは非常に癪だが――格好いいからか、それとも俺はああいう瞳に弱いのか。よく考えればこの四年間ろくに弄っていなかったから、それも多分にあるだろう。
無意識に腰を引いたらしい俺の臀部を掴んで自分のほうに引き寄せながら、一樹はさらにそれを擦り上げる。緩急をつけて擦り上げられ、もう片方の手で脇腹を撫でられ、胸を舐められてもう声を抑えるところではない。くすぐったいどころの騒ぎではない、熱が高まってたまらない。僅かな水音さえ立って、それが更に恥ずかしいんだかなんなんだか、訳が分からなくなる。
そこをタイミング良く先端を抉られ上下に扱き上げられて、胸から顔を話した一樹に耳元で愛してます、と囁かれ、俺はあっけなく達してしまった。
気を失って意識を取り戻すと、一樹は上半身裸になり、前をくつろげてソレを取り出したところだった。見かけによらずやはりグロテスクだが、は、と息をついて瞳を潤ませて頬を撫でられると別に良いように思えるあたり、実に俺は一樹の事を、…いやなんでもない。
「…いいです、よね」
一樹が呟くように言って、俺の目尻に口づけ、足を開かせて俺のアレにぬらした指を奥に一本差し入れてくる。熱の中にほてった一樹の指が入ってくる感覚が生々しい。意外と痛くはないが、余裕というほどでもなく、自然と締め付けてしまう。
は、と熱い息を吐いて一樹がじれったそうに指を進め、中をぐにぐにと弄る。そのたび水音が立っていやらしい。ほぐれたと判断したのか二本目が入ってきて、息苦しくなって息を吐く。
「…力、抜いて…」
抜いてと言われて抜けるか馬鹿野郎。俺はそこまで器用じゃないぞ。
努力はしたがどうにもいかないのを見て取ったのか、前を擦り上げ、俺が体を跳ねさせた瞬間、一樹は奥まで指を入れ、また中をぐりぐりと弄ってほぐし、また指を増やす。
これで三本か、といっぱいいっぱいになった頭でぼんやり思って息を吐き、たまに落とされる一樹のキスを受け止め、曖昧な刺激に身をまかせていた、その時だった。
一樹の指がぐい、と奥を抉るように弄って、今までにない刺激が走った。
「あ、っ、あああ…!?」
なんだ。なんだこれ。今一体何が起こったんだ。
「あ、ここ、ですね…」
調べた時は本当かと思っていたんですけど、ここ前立腺っていって、気持ちいいところらしいですよ。
やけに嬉しそうに言いながら一樹がそこを更に刺激して、同時に胸に項にとキスを落とす。そのたびに体が跳ねる。弄られる度に快感の波が押し寄せるようで、俺の前は瞬く間に張り詰めてしまう。
「ひっ、あああ…!」
体が震えてまた精が出て、俺と一樹の腹を濡らした。
イってしまった衝撃で何も考えられない俺の足を更に開かせて持ち上げ、唇に軽いキスを落として一樹は熱いモノを俺のソコにあてがう。
「あ、いつ、き」
「力を抜いて下さい」
だからさ、力を抜けるもんじゃないんだよ分からない、か…!
「あ、あああああ!」
腰を引かれて、ぐりぐりとさっきの指三本なんか比にならないほどの質量が俺の中に入ってくる。痛い。痛い痛い痛い。別の意味で意識が飛ぶ、か…!?
しかしそこでまたも前を扱かれ、俺の体の力が僅かに緩んだ時、一気に突き入れられて俺は叫び声を上げた。気絶一歩手前でとどまっているのはほぐされていたせいだろうか。というかよく入ったな。すごいぞ俺の体。
次第にもはや痛みも麻痺しはじめ、内壁が一樹のソレを締め付ける。形まで大体分かってしまい、もう泣いて良いのやら笑って良いのやら。
「は、きつ…」
一樹が息を吐く。なら抜け。突っ込むお前より突っ込まれる俺のほうがきついんだ、と言いたいのだが、声が嬌声以外でない上に欲望に染まった雄の貌そのものの一樹の表情がどうにもこうにも愛おしくて、やつの背に手を伸ばして手のひらでしがみつくに止める。
「動き、ますね」
俺の息が僅かに整ったところで一樹が更にソレを奥へと進めて揺さぶりを始める。ぬちゅぬちゅと水音がして、もう痛いんだかなんなんだか分からなくなっていたところで、奥のあの場所をやつの先端が抉った。
途端、口から抑えきれない声が漏れる。本当どこからこの声は出るのか、と一瞬考えて、その考えも次の快感に飲み込まれる。
口の端からよだれが垂れて、いつの間にか涙も頬を伝う。ああ、駄目だ、気持ちいい。
同時に前も責められて、全部が全部気持ちよくて、何度も俺の先端から白いモノがこぼれる。
あともうほんの少しでイく、そうなったところで一樹は一瞬動きを止め――
「出します」
ソレを奥まで大きく突き入れた。
「あ、あぁ、あァあ……!」
俺の喉から大きく嬌声が出て、体が震える。
奥で一樹の熱が弾けると同時に俺の意識も俺の熱も弾け、俺は意識を失った。
*
ベッドに投げ出した体はそれでもあちこちが痛かった。
「腰が痛い」
「…はい」
「腰が痛い足も痛い頭も痛い腕も痛い、責任とれ」
「…すみません」
「あーちくしょー」
一回目の行為が終わったあと抜かずの三発とかいう事はなかったが、それでも抜いたあと一回、後始末をしにいった風呂で最後までじゃあないが一回。疲れて当然のコースを辿ったあとはやはり動けなかった。これでは明日の出勤は無理だろう。良かった、有給余らせておいて本当に良かった。有給はたまに取りなさいと言って下さっていた課長に感謝である。
一樹は一応すまなさそうな顔をしてベッドに俯せに寝転がった俺の腰に蒸しタオルを当てているが、俺には分かる、かなり嬉しそうな顔をしている。
「あーあ…」
思わず溜息が漏れると、一樹がくすくすと笑う。可愛いなあ、ってそれはどういう事だ。
「すみません、僕の欲目です」
なにせ貴方の事を愛していますから、と言ってウインクなんかかましてくる一樹の顔を見て更に大きな溜息をついてしまう。
「あー…。なんで俺あんな事…」
「後悔しても仕方がないですよ。覆水盆に返らず、ってやつです」
「お前が言うな」
口をとがらせて一樹とは逆の方を向くと、かすかな笑い声が立つのと同時に髪を撫でられているのを感じる。
確かに後悔しても仕方がないし、一樹がもしここにいなかったら、と考えると後悔する気も起きないがどうにも癪だ。全部一樹が得している気がする。
「なあ一樹」
「はい」
「浮気したら去勢な」
「はい」
おい即答か。
「だって貴方以外好きになりませんし」
それはどういう自信の持ち方だ。そこまで俺が好きなのか。
「ええ。好きですよ。貴方が別の人を好きになってもね。あ、そうだ。発情期以外も抱いて良いですか?」
「………」
ぐる、と一樹の方を向くと、その顔は微笑んでいるが、少し悲しげだった。本当に器用なやつだなあと思いながらその頭を叩く。
「もう少し察しろ。気が向いた時には相手をしてやるし、お前が俺を好きな限りは俺もお前がいいんだしな」
そう囁いてやると顔を赤くするのが可愛くて、俺の頭はどれだけおかしくなったのかと苦笑する。そしてふいに襲ってきたまどろみに身をまかせ、俺は心地良い眠りについた。
『Ce n'est pas aucun usage qui pleure sur lait du spilt.』――終
↓反転で後書きです。
→もち様に捧げます。遅れに遅れて書き上げました。初エロは難しかったです。ヘタですみません、もち様…。少しでもお気に召せたなら幸いです。
mociさまのみお持ち帰りその他自由です。←
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write----2009/03/09 kirico