スクール水着のM古泉とかっこよくて冷たいキョンで合体執事喫茶パロ(できれば)


 スクール水着は夢のアイテムである。身につければ下半身および上半身のパーソナルスペースを見事に隠蔽しかつ最大限に肌の露出を許すという方法で他人の前での遊泳を可能とし、また場合によってはその隠蔽部をその黒い一枚のゴム様の布を捲ることにより露出させ人を誘う事も可能であり、美少女にそれをされたならばやられない男はよっぽどの根性事情が無い限り逆らうことはできないだろう。
 かくいう俺もそのような感性を持つ健全男性であり、スクール水着のまあそういうビデオだの漫画だのを楽しんだ事も一度ならずある。まあそれなりに好物だといってもいい。
 だがしかし、である。
 何事にも前提はある。俺がスクール水着が好きといっても、若干ご遠慮願いたい時がある。スクール水着は良い、そう断言できるのはスクール水着を着用しているのがその豊満な胸ないし貧乳を恥じらいながら強調する事の出来るような美少女および女性であった場合の事であり、それ以外は若干ご遠慮願いたいというか、願い下げの場合がほとんどである。
 そう、ご遠慮願いたい。
 特に、自分より身長が八センチばかり高くついでに鍛えた腹筋にきざったらしい薄い色の髪を靡かせた無駄に顔のいい男の場合は。

早い話が要するに、今俺が置かれているのはバイト先の執事喫茶の控え室にて、目の前にはなぜかスクール水着を着用している執事喫茶のエースたる古泉一樹が鎮座ましましているという状況だった。
その上その無駄に顔の良い優男は何故かこちらを恥ずかしそうに微笑んで見つめており、おまけに頬が微かに赤い。ついでにスクール水着は女子用だ。何故だ。
「…なあ古泉」
「はい」
「それは何の真似だ」
「いえ、一寸貴方に踏んづけて頂きたいなあと思いまして。こういうの、好みではないですか?」
「………」
勿論踏んづけなかった。コートを羽織って荷物を持って店を出る時、背後から声が聞こえた気がしたがそのまま駅へと歩く。電車に乗った時に初めて、ああお疲れ様ですと挨拶していないなあと気がついた。

 翌日はバイトが無かった。その次の日にバイトがあった。出勤した。
 そして上がるとき、またもスクール水着の古泉一樹に遭遇した。少し目が合った。
 古泉一樹の背後に俺のロッカーは位置するので、その横を通り抜ける。
「…なあ古泉」
「はい」
「お前変態か」
「はい、そうです。所謂マゾヒストではないかと思っております」
「そうか」
 蹴ってくれと言われたが止めた。流石はキョン君、冷たい、と言って古泉は体を震わせていた。その肌はやけに白くて、古泉だなあ、と思った。
 その日はきちんとお疲れさまと言っておいた。

 その次の出勤日、仕事を済ませて控室に戻ると、またもスクール水着の古泉がいた。
「おつかれさまです」
「おつかれさまです」
 それで終わった。その日も古泉の肌はきめ細かくて白かった。

 さらに一週間後、レジ業務を済ませて控室に戻ると、スクール水着の古泉がいる。ただし今日は男性用の水着だった。
「変えたのか」
「はい。こちらの方がいいかと思いまして。一応今までのもメーカー変えてみてたんですよ」
「…そうか」
 それまでの一週間、出勤するたびに遭遇していた光景から少しずれた恰好の古泉の肌はまた白い。俺はそれをしばらく見つめ、奴の脇を通り過ぎてロッカーの扉を開け、中からコートを取り出して羽織り、そして振り向く。古泉は背中を見せたままだが、筋肉が少しびくびくしている。
 俺はなんとなくつばを飲んで、その背に手を伸ばし、
「風邪ひくぞ。ほら、これ貸してやるから」
 コートを脱いでその背にかぶせた。
 何故か古泉は口を一寸開けて笑っているのかよく分からない顔をしていた。前々から言おうと思っていた事を言えて、俺は妙にすっきりした気分だった。

 その次の出勤日、珍しく古泉がいないときに喫茶についたので、なぜか俺のロッカーのポケットに入っていた古泉のロッカーのカギを取り出し、開ける。
 スクール水着があった。手近にハサミがあったので、とりあえず布切れにしてみた。

 仕事を終えて家路に着く。雪が降っていた。今日は古泉がいなかったなあ、と思っていると、後ろから近づいてくる足音がある。
 振り向くと、古泉だった。
「よう」
「…どうも」
「今日はスクール水着じゃなかったな」
「…誰がそうしたと思っているんですか」
 睨まれた。
「そう言われてもなあ」
「まあいいですけどね。あそこまでこう平然と対処されるともうどうしようもないですし、諦めようと思ってましたから」
「それは良い心がけだな。お前のスクール水着はえらく気持ち悪かったからな。たつものもたたん」
 あなたねえ、と恨みがましい声が聞こえてきたので、お前マゾなんだから別にいいだろ、と言い返すと、ふう、とため息が帰ってきた。そして俺を見つめる二つの瞳。
「なんだよ」
「僕、放置プレイは趣味じゃないんです。寂しがり屋だから」
 内緒ですよ。
 そう笑って古泉は急に歩調を早め、どんどん離れて行ってしまった。

 俺が駅に着いた頃、まだ雪は降っていた。そしてその雪の簾ともいえないような膜の先、古泉が立っている。
近付いて行って鞄から奴の定期を出し、渡すと、綺麗な顔が変な具合にしかめられた。
「…いったいなんなんですか、貴方」
 古泉の目を見つめる。琥珀色をした妙に綺麗な瞳がこちらを見つめ返した。
「奇遇だと思ってな」
 なあ、と腕を伸ばして奴に触れる。普通の綺麗な肌色がある。
 俺も同じだ、古泉。いくらなんでも俺だって、

 放置プレイは、趣味じゃない。


END

↓反転で後書きです。読んでやろうという方はどうぞ。
マゾなスク水プレイはいやだけど、コイズミは好きですよなキョンでした。Twitterにて、「10回RTされたらリクエストで古キョン書く」というつぶやきを投下、見事TLの皆様に敗北した結果です。一応…できるだけやったんです…。いわれたものをできるだけ…。

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