月曜日、オセロの盤面を黒く染め、ぼんやりと彼が言った。
「なあ古泉、手を握れ」
「はい、では手を上に」
机越しに握りしめると、ほのかに暖かくてさっぱりしていた。
火曜日、白をなくした盤面を見て、ゆっくりと彼が言った。
「なあ古泉、抱きしめろ」
「はい、ではこちらにどうぞ」
立ちあがった彼の手を引いて抱きしめる。思ったよりも逞しかった。
水曜日、盤面は黒で変わらない。
「なあ古泉、キスをしろ」
「はい、頬でいいですね」
彼の頬は柔らかく、ついでに耳も甘噛みした。
木曜日はゲームを変えた。駒をゴールに押し進め、彼は立ちあがって僕の元へ。
「なあ古泉、キスをしろ」
「はい、今度は唇で」
彼の唇はかさかさしていた。舌を入れて中を舐める。顔を離すと熱い息。
金曜日、また盤面は真っ黒で、彼は白黒のピースを握り、家に電話をかけて言う。
「なあ古泉、俺を抱け」
「はい、僕の家に行きましょう」
帰りにコンビニでローションを買って、家のベッドで彼を抱いた。どうも初めてだったらしく、きつかったけれど気持ちよかった。
ふと思い出して引き出しからコンドームを出すと、彼がわずかに眉を顰めた。
そのあと二回、彼をイかせて僕もイった。彼の嬌声は高くて、こんな声が出るのだなと思いながら興奮した。
土曜日、目を覚ますと彼はもう先に起きていて、二人分の朝食を作ってくれていた。
食べながら、おいしいです、と微笑むけれど、彼は仏頂面だった。
皿を洗い終えて彼が帰り支度をする。ぼんやり眺めていると、目の前にコインを差し出される。
「表か? 裏か?」
「それでは表で」
彼がコインを投げて、手のひらで受け止める。出たのは裏だった。
少しだけ間を開けて彼が言う。
「なあ古泉、忘れてほしい」
「はい、何も忘れません」
彼は目を見開いて次の瞬間、僕の腕の中にいた。
終